賢治なの?

皆さんの街にはバスが走っていますか?

まあ、大体走っているのかな。でも最近大きいバスは採算が取れないのか、本数が少なくなっているような気がします。そこで便利なのがミニバスです。小さいけど安く20分おきに来てくれるのでよく使っています。

その私の街のミニバスのお話。

私はまあまあ郊外の街に住んでいます。車も持っていないので、どこか移動する時は自然にバスと電車ということになります。子供の頃からバスが大好きで、大事な足でした。兄と争ってブザーを押したがったものです。あれ、大人になるとみんな面倒くさくてギリギリまで押さなくなるのはなんででしょうね?

まあ、とにかくミニバスお話です。

最近すごくお気に入りのミニバスの運転手さんが出来ました。どこがお気に入りかと言うと、その人の“語り”なんですね。普通のバスの運転手さんて比較的黙っているか、話しても注意事項ばかり言う人が多いですよね。まあ注意は大事な事なんですけど。時々、混んだバスで少々声を荒げながら注意事項を並べる運転手さんだと「ふー、疲れる…」なんて思ってしまいがち。

でもですね、私の街のミニバスの運転手さんのYさんは違うんです。はい、嬉しくて名前を確認してしまいました。初めは「あー、話し出した。またうるさい人かなぁ(失礼)。」と思っていたんですけど、そのうち「ん?」と気が付いたんです。Yさんは注意事項を最小限にして、あとはずっと道案内みたいな事をしゃべるんです。これがね、優しい声でバスガイドさんなの?みたいな事を言うもんだから聞いてるうちに気持ち良くなってくるんですね。小さい子供が降りる時は「気を付けてね、バイバイ。」とか言うんです。その上運転も上手。結構坂があるのに滑るように走ります。その日は星が綺麗な夜。もうまるでね「銀河鉄道の夜」です。でもバスなんで「銀河バスの夜」で、自分が降りる停留所まで夢見心地でした。

降りる時に「素敵です。Yさん!」と言おうと思ったんだけど、すごく真剣な顔をしていたのでやめました。でも気分は「素敵です!」だったので、家に帰って家族にその話をしました。

そしたら、この前中学生の娘とミニバスに乗ったら、運転手さんがYさんでした。心の中で「よし!」と思って娘と乗っているといつものバスガイドが始まりました。娘も目を見開いて「本当だ!」という顔をしてこっちを向いていました。なので、降りてから家まで娘とYさんのことで盛り上がりました。

昔、大学生だった頃(別の場所に住んでいた)、帰りが遅くなると四人掛けの電車の中はすごく空いていて、一人で腰掛けながら夜空を見上げて「あー、銀河鉄道の夜!」と思っていた事を更に思い出しました。

Yさんは自分の仕事に誇りを持っている人です。

おかげで久々に宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を読み返したくなりました。

あー、素敵です。カムパネルラです。ジョバンニです。「みんなの幸いのためならば僕のからだなんか百ぺん焼いてもかまわない。」「だけど、ほんたうの幸せって何だろう。」

そのうち自分は告白するんじゃないかと。今はその心配をしています。